善光寺の御本尊は今までに誰も見たことがありません
善光寺の御本尊である一光三尊阿弥陀如来像は、絶対秘仏であり、今までに誰も見たことがありません。
善光寺縁起によれば、孝徳天皇の白雉5年(654)ごろに御本尊自身の宣託によって秘仏化されたと伝えられています。つまり、御本尊自身が秘仏になることを選んだのです。
時間軸で考えますと、単純計算で1368年間は御本尊を誰も見たことが無い、ということです。
とはいえ、善光寺の本堂にある厨子(ずし:仏像などを中に安置するための仏具)の中に御本尊は安置されており、誰も見たことが無いけれど、「厨子が非常に重い」といった僧侶の話から御本尊が存在するということが説明されています。
善光寺の御本尊は、閻浮檀金(えんぶだごん)と呼ばれる金でできています。
閻浮檀金は、竜宮城に存在する最高級の金です。
既に御本尊は存在しないのではないか、といった議論もされることがありますが、確かに厨子の中には何かが入っているものとして考えられています。
前立本尊(まえだちほんぞん)は御本尊の身代わり
善光寺の御本尊を誰も拝観できないことから、身代わりとして「前立本尊」が存在しています。
前立本尊はまえだちほんぞんと読み、御本尊を忠実に模して造られたものであるとされていますので、御本尊は前立本尊と同じ姿であると考えられています。
鎌倉時代後期に造られた前立本尊は、金銅仏であり、重要文化財に指定されています。
前立本尊の大きさは、中央の阿弥陀如来が約42センチ(約1尺半)、左右の菩薩が約30センチ(約1尺)であるため、御本尊も同じ大きさであると考えられています。
重さは
御本尊は秘仏化しているのでこれからも姿を現すことはありませんが、その代わりと前立本尊も秘仏化しています。
しかし、七年に一度だけ姿を現すのが善光寺の御開帳です。御開帳では、普段は参拝することのできない「前立本尊」を間近に見て、参拝することができるというわけです。
なお、前立本尊の右手には「金の糸」が結ばれており、これは善光寺本堂の天井を伝って「善の綱」となり、本堂前に建てられた「回向柱」(えこうばしら)とつながっています。善光寺の御開帳で参拝者が柱に触れている理由は、柱を触れることは前立本尊に触れているのと同じであるため、結縁(前立本尊と縁が結べる)できるからなのです。
前立本尊との結縁によって、極楽往生が約束されることになります。
前立本尊が安置されている場所
御開帳期間中の本堂は、次のようになっています。
善光寺の御本尊は、本堂向かって左側に安置されています。これは、御開帳期間中に限らず、常にここが定位置です。
前立本尊は普段は善光寺大勧進の御宝庫に安置されており、御開帳期間中だけ善光寺本堂に遷座されます。場所は、本堂の真正面であり、前立本尊という名前の通り、御本尊の前に立つように安置されます。
外陣参拝
御開帳期間中、外陣からの参拝は参拝料もかからず、自由に行うことができます。
外陣から参拝の場合、内々陣と内陣を挟んでの参拝となるため、前立本尊を直接拝観するのはやや距離があるように思います。ただし、目の良い人であれば全く見ることのできない距離ではありません。
内陣参拝
外陣から内陣に入ると、百五十畳敷きの広い空間が姿を現します。
内陣参拝券(共通参拝券)を購入すると、この内陣から前立本尊を参拝することが可能です。
内陣のなかで最も前立本尊に近い場所でお参りすることができるようになっており、順番に並びながらその時を待つことになります。
内陣参拝を行えば、前立本尊を目の前で見て、参拝することが可能です。御開帳の最大の醍醐味とも言える前立本尊への参拝、ぜひとも体感して欲しいと思います。目の前で見る前立本尊は、表現が難しいですが感動することでしょう。
なお、内陣での前立本尊参拝後はそのままお戒壇めぐりを体験することができます。お戒壇めぐりは善光寺の名物ともいえるもので、内陣参拝券があればそのまま体験することが可能です。
内陣の頭上には、手に楽器をたずさえ奏でながら、極楽より迎えに来てくれる姿を描いた「来迎二十五菩薩像」が輝いています。お見逃しないようにしてください。
内陣参拝の混雑状況について
前立本尊を間近に参拝することのできる内陣参拝ですが、連休や週末にはたいへん混雑しますので覚悟が必要です。
実際に、2022年の大型連休後半の5月4日と5月5日の待ち時間を紹介します。
5月4日は、前立本尊参拝の待ち時間は最大100分であり、善時間帯で平均して80分程度の待ち時間となっています。連休最終日の5月5日は、前立本尊参拝の最大待ち時間は100分で、午後になるほど待ち時間は短くなる傾向にあります。
このように、連休や祝日にはかなりの待ち時間となることがあります。
待ち時間が発生することは予め知っておきましょう。
とはいえ、ここで挙げた待ち時間は御開帳期間中で最も混雑する日であることも事実であり、5月中旬以降はここまで激しく混雑することはないと考えられます。
混雑予想や実際の混雑状況については、「2022年善光寺御開帳の混雑状況」をご覧ください。
内々陣での参拝
前立御本尊に最も近づくことができるのが、「内々陣での参拝」です。
内々陣は、内陣の奥のスペースです。
柱や壁が朱漆で塗られているほか、金箔が施された華やかな空間となっています。
左手には瑠璃壇があり、御本尊が安置されています。そして、その手前に注目すると常燈明が安置されています。この常燈明は、御本尊が放たれた光によって灯された永代不滅の灯りで、約1400年にわたって一度も絶やされることなく受け継がれているものです。
毎日のお朝事が行われるなど、通常は一般の参拝者は入ることが許されませんが、実は、法要を申し込むと内々陣に入ることができるようになっています。
法要とは
善光寺の公式サイトには、次のように法要を説明しています。
どなた様でも三千円から
お申し込みいただける
善光寺のご供養・ご祈願
大切な故人を偲ぶ…
願いを叶えるために祈る…
いつの世も、人々は阿弥陀様に
想いを伝えてきました
静謐な浄域で体験する非日常
貴方も想いを届けてみませんか
信州善光寺
供養や祈願を御本尊に対して特別に行ってもらうことができます。
法要に申し込むと、通常は入ることのできない内々陣に特別に入ることができます。
住職が、名前と供養・祈願内容をひとりずつ読み上げ、法要の最後には御本尊が安置されている瑠璃壇の戸帳が上に御開帳し、瑠璃壇越しに御本尊を参拝することができます。
御開帳期間中は、御本尊の隣に前立本尊が安置されていますので、御本尊はもちろんですが、前立本尊にもかなり近いところまで行くことができるのです。
また、法要に参加すると特別なおしるしが授与されます。
法要の参加方法
法要は御開帳期間中の毎日、複数回行われています。
特に予約は必要なく、法要申込所で手続きをすればお願いすることができます。
時間に余裕があるならば、善光寺御開帳を最大に楽しむという意味で法要への参加は特におすすめです。
法要に関しては善光寺公式サイトをご確認ください。