善光寺は宗派を問わない、珍しい性格のお寺です。それは現在においても引き継がれ、宗派、男女の区別なく全国各地から参拝者が訪れます。
宗派を問わず善光寺が信仰を集める秘密
善光寺には、一遍、親鸞、重源、良寛という様々な宗派の名僧が参拝しています。
松尾芭蕉が「更科紀行」の旅で善光寺を参拝した際に、
月影や四門四宗(しもんししゅう)もただひとつ
と詠んだように、善光寺は一宗一派にかたよることなく、すべての宗派に門戸を開いているのが大きな特徴となっています。
月影や四門四宗もただひとつ
【意味】
仏法は四門四宗と様々な宗派に分かれているが、どの信徒からも愛されている善光寺は月光のようにすべての衆生を照らしている
古くから善光寺は宗派を問わず人気がありますが、その理由は何なのでしょうか。
それは、善光寺が三国伝来の日本で初めての仏様を本尊とし、日本仏教の根源であると考えられてきたためです。
つまり、日本に仏教の宗派が生まれる以前に善光寺が創建されたことに大きく関係しているものと考えられています。
善光寺の御本尊は、「日本最古の御仏」で、「三国伝来」と言われています。
※日本最古の御仏
十一世紀末から十二世紀初めにかけてできた歴史書「扶桑略記」の欽明天皇十三(552)年に「百済国より阿弥陀三尊浪に浮かび来たりて、日本国摂津国難波津に着けり。後三十七箇年を経て初めて仏法有ることを知る。此の三躯を以て仏像の最初となす。(中略)小墾田の推古天皇十年壬戌四月八日、仏の託宣に依りて、忽ち綸言を下し、信濃国水内郡に移し奉る。(中略)今の善光寺三尊是れ其の仏像なり」とあります。(出所:善光寺さん・信濃毎日新聞社)
※三国伝来
善光寺の御本尊は、天竺(インド)・百済(朝鮮半島)・本朝(日本)へと伝ってきたと言われている
善光寺の御本尊は絶対秘仏のため、誰も見たことがなく、今後も見ることができないものです。しかし、鎌倉時代に御本尊を忠実に模写して複製したものが「前立本尊」であり、7年に1度の御開帳で公開されることになっています。
善光寺創建
善光寺の御本尊は、皇極天皇元年(642)に長野の地に遷座し、皇極天皇3年には皇極天皇の勅願によって善光寺の伽藍が創建されたと伝えられています。
現在、善光寺は天台宗と浄土宗の共同体によって管理・運営されていますが、天台宗は延暦二十五年(806)伝教大師最澄が開いた宗派であり、浄土宗は建久九年(1178)に法然が開いた宗派です。
天台宗および浄土宗が開かれたのは、いずれも善光寺創建の後ということになります。この点からも、善光寺は無宗派であるということが説明できます。
善光寺は極楽浄土の入り口であって、一生に一度訪れれば、往生がかなう。そして、善光寺は、宗派、男女、貴賤を問わない、無差別、平等のお寺なのです。
昔、ハンセン病患者が村々から追い出され、救いを求めてやってきた際には、善光寺の周りに町をつくり、通行税を取る権利さえ与えらえていました。
善光寺は、全国から参拝者が毎年大勢訪れる日本を代表するお寺の1つであると言えます。
善光寺は誰でもお参りできる無宗派のお寺
現在は善光寺山内にある天台宗の大勧進と浄土宗の大本願の二大寺があり、法要など日常の行事を交替で勤めています。
また、天台宗の大勧進の下には25院、大本願の下には14坊があります。これら2つの宗派によって善光寺は管理・運営されています。
善光寺自体は無宗派ですが、天台宗と浄土宗の寺院・僧侶が共同して善光寺を護っています。つまり、寺内には天台宗と浄土宗のお寺が同居しているのです。
それぞれの宗派を代表する、ご貫主様(大勧進)とお上人様(大本願)が、善光寺の住職してお勤めになっています。お上人様は尼僧様であり、男女の差別はありません。
お上人さま
大本願の住職は、代々公卿からお迎えする尼公上人が務められてきました。
由緒によれば、第三十五代皇極天皇の大本願により善光寺が創建された皇極元年(642)、大臣曽我馬子の姫君を、善光寺御守護の寺務職としtがことに始まると言います。依頼、代々皇族または公卿諸侯の女性から住職を選ぶことになりました(出所:祈りの道善光寺・あかぎ出版)
女人救済・女人往生の寺
日本では、明治初年まで多くの寺は女人禁制でした。
特に、比叡山延暦寺や高野山金剛峰寺が有名で、女性は修行の障害になるということで、立ち入りを禁じられていました。
仏教においては、元来、女性は宗教的能力について劣っており、そのまま仏には成れないという考え方が主流でした。そのような中で、善光寺では中世以来、女性の本堂への立ち入りを認めてきました。
さらに、善光寺縁起は如是姫の救済から始まっていることも、女人救済の寺として善光寺が全国で稀有な存在であることを示しています。
江戸時代には参拝者の半数が女性であったと言われており、女性に広く信仰されたことが善光寺の特徴でもあります。
現在でも多くの女性が善光寺を参拝するなど、宗派だけではなく、老若男女も問わずに信仰されているのが善光寺なのです。
関連記事
- 本田善光による善光寺創建の歴史を伝える「善光寺縁起」!
- 善光寺はたび重なる火災でも再建され続けた
- 善光寺は全国でも珍しい無宗派、その理由は?
- 全国に善光寺は119、善光寺仏は443ある!
- 善光寺が女人救済・女人往生の寺として有名な理由は